$ play ep05 — だい5かい の授業
#5 AIへの「上手な頼み方」ってあるの?— 呪文じゃなくて、目的・材料・完成形

まず結論
AIへの上手な頼み方は、あるのか。答えは、「あります。でもそれは『呪文』じゃなくて、『仕事の頼み方』と同じもの」。具体的には、この3点セットです。
「目的」、「材料」、「完成形」。
何のためにやるのか(目的)、何を使ってやるのか(材料)、どうなったら出来上がりなのか(完成形)。この3つを添えてお願いすると、自分の認識とClaude Codeが出してくるものの「ズレ」が激減します。そして、3つ全部を最初から完璧に伝えられなくても大丈夫。足りない分は、会話で後から足せばいい。
よくある3つの誤解
- 「『プロンプト』っていう専門技術を勉強しないといけないんでしょ?」 — 「神プロンプト100選」を分解してみると、中身はだいたい目的と材料と完成形が丁寧に書いてあるだけ。呪文に見えるものの正体は、丁寧な仕事の依頼文です。もともと持っている指示・依頼のスキルをAIにも向けるだけ。
- 「長く、細かく書けば書くほど、いいんでしょ?」 — 道案内で「32.5m直進して90度右折して…」と言われたら逆に迷うのと同じで、量は正義ではありません。大事なのは3点が入っているかどうか。依頼文が長くなってきたら「条件が多い」のではなく「仕事が大きすぎる」サイン。分割を考えましょう。
- 「一発で完璧に伝えないと、いけないんでしょ?」 — Claude Codeとのやりとりは検索ではなく会話。美容室と同じで、仕上がりを見ながら「ここはもうちょっと短く」と直していくほうが、最初に完璧な指示をするよりラクで確実です。
3点セットの中身
- 目的 — 「役員会議で使うから」の一言で、相手に「気を利かせる余地」を渡せる。実は一番効果があるのに、一番省略しがち。
- 材料 — 「デスクトップの『経費』フォルダの中のファイルを使って」。探し物の時間と、違うファイルを掴む事故を減らす。
- 完成形 — 「一覧表にして」「箇条書き5個で」。できたものを、誰が、何に使うかを想像すると自然に固まる。どれか1つだけ選ぶなら、まず完成形。ここだけはこちらから指定しないと「無難な形」に仕上がってしまい、ズレに気づくのも遅れます。
実例2本 — そのまま真似できるビフォーアフター
実例1: アンケートのまとめ
ビフォー。
アンケートの結果、まとめといて
アフター。
来週の朝の会議でチームに共有したいから、
「アンケート」フォルダに入ってる回答ファイルを全部読んで、
よかった点と改善点に分けて、それぞれ箇条書き5個くらいにまとめて
1行目が目的、2行目が材料、3行目が完成形です。ビフォーだとClaude Codeくんは「まとめるって要約なの?集計なの?」「どのファイル?」「どんな形式で?」を頑張って推測するしかなく、推測が外れると「思ってたのと違う」が起きます。アフターは推測で埋めるしかなかった穴が3つとも埋まっているので、一発目からかなり期待に近いものが出てきます。増えたのはたかだか2〜3行。費用対効果が恐ろしく高い2〜3行です。
実例2: 旅行の計画
ビフォー。
旅行の計画立てて
アフター。
9月の三連休に、両親を連れて温泉旅行に行きたい。
出発は東京、予算は3人で15万円くらい、両親は歩くのが少し苦手。
候補地を3つ、それぞれの理由つきで一覧表にして
「両親は歩くのが少し苦手」みたいな事情も、立派な「材料」になります。仕事でもプライベートでも、指示の基本は同じ。
ちなみに、このアフターの依頼文は別に上手な文章ではありません。箇条書きに毛が生えた程度の普通の文章で、語彙力や文章センスは1ミリも要求されない。AIへの指示を書くのは作文の試験じゃなくて、遠足の忘れ物チェック——「水筒、持った? タオル、持った?」と同じノリで、目的・材料・完成形の3つの持ち物を確認するだけです。
ズレたときの直し方 — 3つの型
- 違いを言葉にする — 「表の項目が多すぎる」「文章が硬すぎる」。全部じゃなくていい、一番気になるところ1個だけでも伝えれば、そこから順番に直してくれます。
- いいところも伝える — 「この表の形は問題ないから、文章だけ柔らかくして」。変えなくていいことと変えてほしいことをセットで伝えると、問題なかったところまで一緒に変わってしまう事故が防げます。
- 先に質問してもらう — 大きめの依頼には「作業を始める前に、分からないことがあったら質問して」と一言添える。AIは基本姿勢が頑張り屋さんなので、分からなくても推測で走り切ろうとします。「分からなかったら聞いてね」の声かけひとつで、頑張る方向を正しい方に向けてあげられます。
おまけ — 頼み方の練習場
目的・材料・完成形は、部下・後輩・外注さん・家族への頼みごとにもそのまま効きます。そしてAI相手なら、この練習がノーリスクで無限にできる。人間相手に「ごめん、さっきの指示、練習だったからもう一回いい?」とは言えませんが、Claude Codeくんは1日に何十回頼み直しても文句ひとつ言いません。「頼み方」というスキルに、人類史上はじめて練習場ができた——そう考えると、使わない手はないですね。